昭和初期の“ご当地ソング” 「常磐津 諏訪音頭」が復活

昭和初期にお座敷などで踊られ、近年では忘れ去られつつあった「常磐津　諏訪音頭」が復活した。９日、諏訪市の油屋旅館で開いた花柳流菫玲会の秋の勉強会で、復活に尽力した山本斐子（花柳弥栄斐女）さん（７５）＝諏訪市大手２＝らが会員の前で踊りを発表し、昭和の文化をよみがえらせた。
　「常磐津　諏訪音頭」は、諏訪の四季それぞれの情景を織り込んだ詩に、当時流行していた常磐津の曲を付けて完成させた“ご当地ソング”。歌詞には御柱祭、夏祭り、御神渡りなどが詩情豊かに歌われている。これに花柳流師匠の故花柳徳弥さんが踊りの振り付けをし、弟子や芸者衆によって踊られた。しかしレコードなどの音源がなく、昭和３０年代ころから次第に踊られなくなったという。
　「１０代のころに踊った記憶があった」という山本さんが、「古い文化が消えてしまうのは惜しい。消え去る前に何とか復活させたい」と立ち上がった。現在ただ１人、曲を演奏できる大手見番の千代丸さんに依頼して、今年１月、三味線の弾き語りをカセットテープに録音することができた。
　「１０年来の念願がかなって、曲が手に入った」と山本さん。秋の勉強会での発表に向け４月から、宮坂節子（花柳弥佐加）さん（８０）＝同市清水町＝とともに練習を開始。先代の徳弥さんから踊りを教わっていた師匠の花柳弥寿々さんの指導を受け、けいこを重ねてきた。
　勉強会は、弥寿々さんの弟子が集まり年１回、日ごろの研さんの成果を発表しあう場。番組の最後に２人が「常磐津　諏訪音頭」を披露した。会員らは初めて見る人も多く、感心しながら大きな拍手を送っていた。
　山本さんは「また世に出すことができ、絶えずに残せることがうれしい。皆さんに見てもらい多くの人に踊ってほしい」と復活を喜び、宮坂さんは「諏訪の踊りなのでこれからも長く引き継いでほしい」と話していた。

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